<最怖>背後
近所の教会の息子Aと俺は
公立中学で出会った
それから意気投合して、
高校も合わせたように同じ高校に進んだ
大学は、
うちの親が受験戦争をやれと命じたので
別々となった
あいつはなぜだか國學院に行った
塾通いをさせられだした頃から
Aとは疎遠になった
お互い、順調にいっていれば
三年になっている筈の春
Aのご両親から電話が有り、
俺は久々に教会に顔を出した
俺がよく遊びに行っていた頃は
水曜と日曜は凄く活気に溢れていたのに
棚の聖書の冊数すらほとんどない有様になりはてていた
Aの両親は
俺にAをどうにか部屋から引きずり出して欲しいと頼んだ
それから半年近く
週一日程度のペースでAの家へと通った
声をかけても無言
ノブを回しても扉は開かない
夕食時まで待っても
俺がいる間は出てこない
ある日帰り際
裏道を通ってAの部屋を見上げた
Aが此方を見下ろして
泣きそうな顔をしていた
俺は妙な違和感を感じて
Aの背後に目をこらした
「クマ?」
ずんぐりとした黒い影クマのようなものが
Aを見ていた
その目がいきなりこちらをみた
白目のない黒い輝き
たちまち膝が笑い出したが
恐怖が勝って俺は駆け去った
振り返り
Aが窓ガラスを手で打って
俺を呼ぼうとしている姿が見えた
あれはやばいものだ
直感がそう言って以降
Aの家には寄り付かなかった
ある日我が家のポストに
喪中を知らせる手紙が届いた
Aの両親からだった
その数日後、
俺はポストの中に黒っぽい茶色の剛毛を発見した
即座にあの日見たものが思い起こされて
俺は固まった
家を振り返ると、
風呂場の硝子の向こうに大きい黒い影が見えた
また次の記事でお会いしましょう。