<最怖>この世で最も怖い話まとめ

この世で最も怖い話をまとめています。毎日19時20時21時に1話づつ投稿。あなたを恐怖のどん底に落し入れます。朗読もはじめましたのでそちらもどうぞ。

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<最怖>島の祠(長編 全編)

もう10年近く前の話。

私は友達と3人でキャンプに行ったんだ。

砂浜でつながった無人島。

私の地元で、
中学の時はよくそこで遊んだ。

夏場は家族連れも普通にキャンプするような島。

私は女、AとBは男、
中学の時の同級生。

3人とも19歳だった。

Bが一浪で大学に受かって、
晴れて3人とも大学生になった。

そのお祝いで、
入学前にバーベキューでもしようってノリだった。

まだ4月で少し肌寒かったけど、
テントをはれば問題なかった。

その無人島にはたくさんの防空壕が掘ってあって、
中学生の時に肝試しをしたこともあった。

その度に、
軍服の幽霊が出たとか、
子供の幽霊がとか、
話題にはなったが
実際に何か起こったことは一度もなかった。

島は一周で2~3キロ程度だったと思う。

南から北にまっすぐ島を縦断できる道と、
島を一周するような道があった。

南側が砂浜に接していて、
東側がちょっとした港。

北側と西側はほとんど岩場だった。

北側は比較的平らな場所が多くて、
私たちの遊び場もほとんどそこだった。

西側は、
島を一周する道も途中で途切れていたり、
雑草が多かったりで、
ちょっとした探検気分で行く以外は行くことはなかった。

キャンプ当日も、
私たちは北側の平地にテントを張った。

バーベキューもそれなりに楽しく終わって、
3人で川の字になって寝た。

Bが肝試しをしようとか言ってたけど、
Aも私も今さらめんどくさいと
相手にしなかった。

次の日の朝、
私たちはコーン、コーンという、
釘を打つような音で目をさました。

何の音だろうと気にはなったけど、
音源を捜そうとまでは思わなかった。

昼過ぎ、
テントを片付けて島を出ようと
島を縦断する道を歩いていくと、
島を一周する道を西側から歩いてくる5人の団体と鉢合わせした。

彼らは2m近くある古びた板を20枚以上運んでいて、
全員作業服を着ていた。

彼らは軽く会釈をすると、
そのまま島から出て行った。

ふと彼らが来た道に目を向けると、
もう1人こちらに向かって歩いてくる人影があった。

あきらかに服装が違って、
神主さんか何かだろうと思った。

その男の人は、
まっすぐ私たちの前にやってきた。

神主「君たち、昨日からここにいたの?」

A「はい、キャンプしてました」

神主「そっか、う~ん、大丈夫だと思うけど、
何かあったらここに連絡して」

そう言うと、
神主さんは私たちに名刺を差し出した。

A「何かある可能性があるんですか?」

神主「いや、いまちょっと儀式をやって、
こんな時期に島に人がいると思わなくってさ」

A「この島で儀式なんかするんですか?」

神主「ああ、海開き前の安全祈願だよ」

私「ご苦労様です。
さっきの人たちもその関係の人ですか?」

神主「あの人たちは、町役場の人。
設営の手伝いをしてもらっただけ」

私たちは、
納得して神主さんが島から出て行くのを見送った。

Bがすぐに、
儀式をした場所を見に行きたいと言い出した。

私も、子供の頃よく遊んだ場所に、
そんなところがあるのは驚きだった。

西側に向かって歩いていくと、
彼らが歩いたであろう獣道が残っていて
比較的簡単にその場所は見つかった。

他の防空壕に比べると
明らかに大きさの違う穴が海の方を向いて開いていた。

高さも横幅も2m以上あったと思う。

そして、その穴に
真新しい木の板が穴を塞ぐように打ち付けてあった。

塞いである防空壕はいくつもあったが、
こんな塞ぎ方をされているのは初めて見た。

私達が聞いた音は、
これを打ち付ける音だったのだと思う。

B「お、あれ、あそこから中見えそうじゃね?」

Bが指差したところを見ると、
穴の左上あたりに、
板と穴に隙間があるのがわかった。

背が届く高さではなかったため、
AがBを肩車して中を覗こうと試みた。

B「だめ、真っ暗。全く見えないわ。
ってか、なんだこれ、
板の奥にさらに布が目張りしてある」

そういって、
Bが板に少し体重をかけた時、
バリバリッと音がして、
一番上の板がはがれてしまった。

AとBはバランスを崩して
尻餅をついていた。

私「ちょっと、大丈夫?怪我してない?」

B「おまえしっかり支えろよ・・・あぶね~」

A「いや、お前が上でバランス崩すのが悪いだろ・・・」

とりあえず、
AもBも怪我はないようだった。

改めて穴を見てみると、
剥がれた板の奥に真っ黒な布が張ってあるのがわかった。

A「板の奥にさらに布って、普通じゃなくない?」

B「なんつーか、元に戻して帰った方が良いと思う」

そう言って、
二人は剥がれた板を元に戻し始めた。

ただ、長さが2m以上ある板を
肩車の状態で固定するのはちょっと無理があって、
どうしても板の反対側を抑える人が必要だった。

周りを見回すと、
海にはいくつも岩が落ちていて、
それらを積み上げれば簡単な踏み台は作れそうだった。

AとBが数回往復して、
50センチほどの踏み台を穴の右側に積み上げた。

身長の関係でAが私を肩車して、
Bが板の反対側を抑えることになった。

Bはぶーぶー言っていた。

Aは重い、足が太いと言っていた。

私はとりあえず、
Aの頭を数回叩いておいた。

板を元の場所に戻そうと持ち上げた時、
板の奥に張られた布が
少し剥がれていることに気づいた。

私は、AとBにそのことを伝えて、
先にそっちを直そうと言った。

元に戻そうと布を少し引っ張った時だった。

西に傾きかけた太陽の光が
私の背中に当たるのを感じた。

同時にほんの少しだが、
布の隙間から穴の中が見えた。

そこにはおびただしい数の御札が張られていた。

縄に括り付けられた御札が
穴の中を埋め尽くしていた。

そして、・・・・・・私は見てしまったのだ。

御札の隙間に見えたもの、
それは間違いなく顔だった。

まっしろい能面のような顔。

目は細くまっすぐ顔の端まで伸びていた。

真っ暗な中で、
その顔だけが白く浮き上がって見えた。

黒目、白目の区別はつかなかったが、
間違いなく目が合ったのを感じた。

すると、
それは三日月形の口を大きく横に広げ、
にやりと微笑んだ。

私は悲鳴をあげ、
板を突き放すようにして
Aと一緒に後ろに倒れた。

それからのことは、
よく覚えていない。

気がつくと私は病室のベッドの上にいた。

AとBが、
私が頭を打ったのだと思い
病院に運んでくれていた。

親も来ていて、
事情は二人から聞いていた。

AとBは、
医者から特に問題がなさそうだという結果を聞いてから、
もう一度同じ場所に戻って
穴を塞ぎ直してきたそうだった。

目を覚ましてから、
二人から何があったのか聞かれたが、
見たもののことを自分でも信じたくなくて、
御札があって怖くなったとだけ伝えた。

二人も塞ぎに行った時に、
御札があったことは確認していた。

何となく、
三人ともあの穴がなんなのか言及するのを避けていた。

私はその日のうちに家に帰ることができた。

親からはいい年して子供みたいなことを・・・
と叱られた。

本当はその日のうちに東京に戻る予定だったのだが、
頭を打った(ことになっている)から
体調に問題がおきるといけないので、
とりあえず自宅に一泊することになった。

私が見たものは何だったのだろうか。

見間違いだったのだろうか。

気のせいだったと思いたかったが、
昼間見た顔は私の記憶にはっきりと残っていた。

怖くて、
その日は電気をつけたまま寝ることにした。

朝方4時過ぎ、
私はふと目をさました。

電気が消えていた。

入り口のあたりに人が立っていた。

全身から汗が吹き出るのがわかった。

体は動く。

金縛りではない。

恐怖のあまり、
私は目をつぶった。

ひたすら時間が過ぎるのを待った。

何分経ったかわからない。

私は意を決してもう一度目を開けた。

人影は消えていた。

私は急いで電気をつけて、
部屋を見回した。

特に変わった様子はなかった。

恐る恐る入り口に近づいてみた。

何もないはず、
安心を得るために確認したかった。

私はショックのあまりそこに座り込んでしまった。

人影があったあたりに
小さな水溜りができていた。

それは、
そこに何者かがいたことを示す確かな証拠だった。

私はしばらくボーっとしていた。

なんでこんなことになったんだろう・・・
そんな感情だった。

女「さみしかった・・・」

耳元で、
そう囁く声が聞こえた。

女の声だった。

自分の体がガタガタと震えるのがわかった。

声にならない声をあげながら、
私は親の寝室に走った。

私「人がいたの、人が出たの。
怖い、怖い!」

多分、
私はそんな感じで父にうったえたのだと思う。

父は血相を変えて私の部屋に行ってくれた。

母もすぐに目をさまして、
私の手を握っていてくれた。

数分して父が戻ってきた。

父「大丈夫か?
部屋には誰もいなくなっていたぞ。
部屋もあらされてはいないみたいだったから、
向こうも逃げたんじゃないか?」

父は、
泥棒か何かだと思っていたのだと思う。

私「違うの、幽霊。女の幽霊」

父「幽霊?
・・・バカなことを言ってるんじゃない」

私ホントに出たの。
声も聞こえたし。
水溜りもできてた。

全く信じようとしない父を連れて、
私はもう一度部屋に行った。

水溜りは残っていた。

私「ほら、これ。ここにいたの」

父「・・・風呂上りに濡れたままだったんじゃないのか?」

正直、よくわからなくなっていた。

風呂上りの水滴ならそれでよかった。

聞こえた声も、
気のせいだったことにしたかった。

私「さわいでごめんなさい」

父「まあ、なにもなくてよかった」

そう言うと、
父は寝室へ戻っていった。

私は部屋で寝る気にはなれず、
リビングのソファーで横になった。

次の日、私はAに電話をした。

AとBには特になにも起きなかったと言っていた。

東京に帰った私は
バイトを終えて帰宅した。

多少迷いはあったけど、
電気はつけて寝ることにした。

その日はなかなか寝付けなかった。

仕方なく、
深夜のテレビショッピングを見ていた。

ちょっと眠気を感じ始めたときだった。

テレビのすぐ横に、
女が立っていた。

あまりに突然すぎた。

女は微動だにせず、
少し下を向いていた。

ショートカット、
おかっぱに近い髪型。

服装はジーパンにTシャツ。

顔は、
前髪に隠れてほとんど見えなかった。

私は女と対峙したまま
身動きひとつとれずにいた。

テレビショッピングの
妙に明るい会話が部屋に流れていた。

私が瞬きをした瞬間、
女は消えていた。

女がいたところには、
やはり水溜りができていた。

私は部屋を飛び出すと、
Aに電話をして助けを求めた。

私「A?遅くにごめん。
あのね、幽霊が出たの。
ホントなの。
信じられないと思うけど」

A「マジで言ってるの?
今から行くよ。
東京のアパート?」

私「うん、でも、
近くのコンビニに行くからそこに来て」

Aは、
私の家から車で
30分程度のところに住んでいた。

Aはすぐに来てくれた。

起きたことを説明して、
部屋を見てもらった。

水溜りは残っていた。

ふき取ろうとも思ったけど、
気持ち悪くて触れなかった。

A「お祓いだよな…」

私「うん、そうする。
どこに言えば良いんだろう」

A「このまえ名刺をくれた神主さんは?」

私「ああ、そうか。何か知ってるのかも」

私達は、
近くのファミレスで朝が来るのを待った。

次の日の朝、
Aが名刺にあった番号に電話をした。

A「こんにちは…Hさんのお宅でしょうか?
この前、○○島で会った学生です。
実はちょっと困ったことになりまして…」

話はすぐについたようだった。

今からでも来なさいと言われたらしい。

まさか、
2日でまた地元に帰ることになるとは思わなかった。

Aが車で名刺の住所まで送ってくれた。

午後2時過ぎ、
Hさん(神主さん)のお宅を訪ねると
あの時の男の人が迎えてくれた。

Hさんは普通の服装で、
見た感じは優しい顔で小太りのおじさんだった。

私は起きた事を正直に話した。

洞窟の板をはがしてしまったことも伝えた。

Hさん「ああ、そしたらまずはそれが先だ。
ちょっとここで待っててくれるかな」

そう言って、お茶を出すと
すぐに家を出て行ってしまった。

Aと私は状況が把握できないまま
そこで待っていた。

1時間以上たってHさんが戻ってきた。

Hさん「うん、お待たせ。
向こうはもう大丈夫だった。
あとは君だね」

A「すいません、
あの洞窟はなんなんですか?」

Hさん「うん、それも合わせて説明するよ。
聞いた方がスッキリするでしょ」

そう言うと、
次のようなことを教えてくれた。

まず、
私達の地元は東西を山に挟まれている。

そして、それらの山は
それぞれ強い神様によって守られている。

だから昔は、
いろいろな霊とかそういったものは
霊的に弱い私達の住む町を通り道のように使っていた。

ところがある時、
町に流れ込む川の増水を防ぐために治水工事を行って、
さらに水の神様を祭る祠を川の上流に作ってしまった。

その結果、
通り抜けられなくなった霊が
町に溜まるようになった。

そこで作られたのが、
あの島の洞窟。

正しくは祠。

あそこで、
霊の流れを切って
町に入らないようにしたんだそうだ。

ただ、それで解決というわけにはいかなくて、
今度は山を隔てた周りの町で
病気とか悪いことが起きるようになった。

で、どうしたか。

島の祠は封じて、
川の上流の祠の場所を移動した。

霊の流れは元に戻したということ。

でも、封じたとはいえ
島の祠は残ってしまった。

霊を退ける力は残っていて、
逆にそれを抑えているという変な状態。

不安定な状態を作ったことで、
その島のあたりによどみができるみたいに
霊が溜まってしまうことがあるそうだった。

Hさん曰く、
西から流れてくる海流が島にぶつかって、
西側に渦潮ができる様子を想像すると
わかりやすいとのことだった。

そして、
私はその滞留していた霊を
拾ってしまったんだろうといわれた。

あの日、
Hさんは海開き前の安全祈願をしていたのだけれど、
そのために一時的に祠を開いて
ストレスを逃がすようなことをしたんだそうだ。

私達が板をはがしてしまったこと自体は、
それほど大きな問題ではないと言われた。

その時見えた白い顔については
よくわからないとのことだった。

板は、直したとはいえ
きちんと封印されていないと困るので、
確認に行って来たのだそうだ。

そして、本題。

 

後編でお会いしましょう。