<最怖>この世で最も怖い話まとめ

この世で最も怖い話をまとめています。毎日19時20時21時に1話づつ投稿。あなたを恐怖のどん底に落し入れます。朗読もはじめましたのでそちらもどうぞ。

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<最怖>島の祠(長編 後編)

私に憑いている霊は祓えるのかということ。

Hさん「まずは、やってみましょう」

私「あの、お金はかかるんですか?」

Hさん「ああ、半分は私のせいですから良いですよ」

そう言うと、私は別室に通された。

板の間に神棚の豪華版のようなものがあった。

Hさんが着替えてすぐに戻ってきた。

棒のさきに白い紙がついた
例の道具を持っていた。

何かぶつぶつ言いつつ
私の前でそれを振っていた。

しばらくするとHさんが、
汗を滴らせながらこう言った。

Hさん「供養する方法を考えましょう」

Hさん「祓うこともできるかもしれませんが、
鎮める方が間違いないと思います。
推測ですが、
この女性は山陰地方から流れてきています。
多分○○のあたりだと思います。
そこで、女性を供養する方法を考えましょう」

A「祓えなかったんですか?
詳しい場所がわからずに供養ってどうするんですか?」

Hさん「霊が出るのは怖いと思います。
ただ、命に関わるような感じはしません。
それならば、時間をかけてでも
安全な方法が良くないですか?」

私「お祓いは危険なんですか?」

Hさん「リスクはあると思います」

私「わかりました。
山陰地方の○○に行けば良いんですね」

A「え、ホントに行くのかよ」

私「だって、しょうがないじゃない」

とりあえず、
解決の糸口が見つかっただけで安心できた。

何より、
私にはほかにすがるものがなかった。

次の日、
私は山陰地方に向かう電車に乗っていた。

Hさんはついては来てくれなかった。

お願いしたかったが、
さすがに無理があると思った。

いつでも連絡をください、
とだけ言われた。

Aはついて来てくれた。

心強かった。

*○という地域に着くと、
全身に嫌な感覚が走った。

私はそこに座り込み、
嘔吐していた。

すでに時間は夜の7時をまわっていたため、
予約してあったホテルに入った。

フロントで、
近くのお寺や神社について聞いてみると、
大きなお寺なら…
と△△寺というお寺を教えられた。

本当はここからが重要なんだと思うんだけど、
実はよく覚えていない。

お寺や霊場の情報は
Aが走り回って集めてくれたようだった。

私は精神的に限界で、
ほとんど眠れず、
ただAに案内されるところに

ふらふらと付いていく状態だった。

時々現れる女の影が
私をさらに追い詰めていった。

何の手がかりもなかったけれど、
何となくその場所に行けばわかるような気がしていた。

それは、○○に着いたときに感じていた。

5日ほどその地域の仏閣を回って、
たどりついたC寺。

そこに着いたときのことは覚えている。

ああ、ここだ、
って思った。

それまでふらふら歩いていた私が、
Aを追い抜いてお寺に入っていった。

私「すいません、こんにちは」

住職「こんにちは、いらっしゃい」

私「あの…」

住職「これは…また…、
ご苦労なされたでしょう」

私「え、わかるんですか?」

すごい希望が心に湧いてくるのがわかった。

ああ、これで助かるんだ、と思った。

住職「まずは、ゆっくりお話をお聞きしましょう」

そう言われると、
私達は中へと案内された。

小さな板の間に通されると
冷たいお茶が出された。

私は、自分に起きたことを事細かに話した。

残念ながら、
住職さんにはその女性について
わかることはなかった。

結局振り出しにもどったのか…
と力が抜けるのがわかった。

また、住職さんは私の話に
何となく違和感を感じている顔つきだった。

住職「昨年、いろいろなお宅から
預かっていたものを供養して燃しました。
それが関係しているのかもしれませんが、
なんだか…」

私「そこに案内してください。
お願いします」

私達は境内の空き地に案内された。

なにもなかった。

ただの空き地だった。

住職「ここで燃したんです」

私「燃したものはどうしたんですか?」

住職「灰はそのまま埋めました」

私「掘り起こしてもよいですか?」

住職「…かまわないですよ」

ここで、私が取った行動。

人って追い詰められると
正しい判断ができなくなるらしい。

私は、手でガリガリと地面を掘った。

狂ったように掘っていたそうだ。

すぐにAに止められて、
住職さんがスコップを持ってきてくれた。

爪が割れて、
血が出ていたけど
どうでも良かった。

そして、
埋められた灰の中から
いくつかの木片が出てきた。

布切れもあった。

よくわからないけど、
これだって思った。

正直、
体力的にも精神的にも
限界だったんだと思う。

特に、
最後に救われたと思ったのに
結局わからなかったのが致命的だった。

もう、これでもこれじゃなくても良いやと思っていた。

もし違ったら
リスクがあっても祓ってもらおうと思った。

そして、私達は
木片や布切れをもらって帰路についた。

帰り際、住職さんが、
もし何かあったらまたいらっしゃい、
と言っていた。

帰りの電車では、
久しぶりに眠りにつくことができた。

次の日、
私達は神主さんの家を訪ねた。

私「これが関係あると思うんです」

そういって、
木片を神主さんに見せた。

神主さんはまじまじとそれを見つめると、
一言、おつかれさま、と言った。

私はまた、
別室に通された。

神主さんは、
火を炊きながら私に向かい合うように座った。

今度は、
紙のひらひらがついた道具は持っていなかった。

木片を木の台に載せると、
ぶつぶつと何か念じていた。

私はただただ、
その儀式を見つめていた。

神主「バカじゃないの?」

小さな声だったが、
そう聞こえた。

私はお腹のあたりが苦しくなるのを感じて
神主さんを見つめた。

相変わらず、神主さんは
下を向いて何かを念じている様子だった。

神主さんの声が止まって、
長い静寂があった。

神主「ねぇ…」

明らかにトーンの違う声で
神主さんが私に声をかけた。

そして、
神主さんは私の方を見ると
歯を見せて微笑んだ。

神主「バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないのバカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?
バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?
バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?
バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?バカじゃないのバカじゃないのバカじゃないの?」

神主さんの顔がみるみる崩れて、
あの能面のような顔になっていた。

あと私はただ、
涙を流して座っていた。

小躍りしながら
能面は部屋から出て行った。

その時、
部屋の隅にあの女が立っていることに気づいた。

私「もう、なんなのよ!
いいかげんにしてよ!
お願いだから!」

私は女に向かって叫んでいた。

異変に気づいたAが
部屋に入ってきた。

私「A、あそこ、見えるでしょ、あそこ」

私は女のいる方に目線を向けて
Aに女の場所を伝えた。

A「え、あ、うわ、ええ、あ、え??」

明らかに錯乱していた。

Aにも女は見えているようだった。

A「神主さんは、神主さん、神主さんは?」

私は答えずに
Aの手をとって部屋から逃げ出した。

女は部屋の隅で立ったまま
微動だにしていなかった。

私達は車に乗ると
すぐにそこを離れて、
遠くのファミレスに入った。

私はしばらく泣いていた。

AはBに電話をしていた。

数時間後、
Bがファミレスにやってきた。

すこし落ち着いた私は
二人に神主さんが豹変したことと、
洞窟で見た能面のことを話した。

Aは女を見てしまっただけに、
顔色が真っ青だった。

B「まずその神主さんにもう一度会ってくる」

A「は?
絶対やめたほうが良いって。
危ないし」

B「大丈夫、二人はここで待ってて」

そう言うと
Bは地元にいる仲間数人に電話をしていた。

B「じゃあ行って来るね」

そう言ってBはファミレスから出て行った。

私達はBからの連絡を待った。

しばらくしてBから連絡があった。

言われた場所に来たけれど、
それらしい家がないとのこと。

そんなはずはないとAが伝えるが、
どうしても見つからないといわれた。

私達も意を決してそこに向かった。

B「ここらへんで合ってるだろ?」

A「うん、このあたり」

A「あれ…なんで?ない」

私「うそでしょ、
だってここにあったよ。
住所も合ってる」

神主さんがいたはずの家は
空き家になっていた。

見た目も明らかに違っていて、
もう数年は人が住んでいないように見えた。

D「B、近くの人に聞いてみたけど
そんな家ないって」

Bは5人も仲間を集めていて、
その人たちが近所の家で聞き込みをしてくれていた。

B「そっか、ありがとう。
今日は解散で。ごめんな」

D「おれたちも少し調べてみるわ」

そう言って、
D達はそれぞれの車に乗って帰っていった。

もう何がなんだかわからなかった。

どうしてよいかわからず、
頼るものもなくなって
私はそこに座り込んでしまった。

私「もうヤダ」

ただ、
駄々をこねる子供のように
私はそこで泣いていた。

AとBはしばらく私を励ましたりしたあと、
二人で話をしていた。

A「今からもう一度○○に行こう」

実は、私もそうしたいと思っていた。

ただ、
1人で行動するのは嫌で、
でもそんな遠くまで
またAを連れて行くのもダメな気がして言えずにいた。

うれしかった。

そこからAとBは交代で運転して、
丸一日かけて○○まで私を連れて行ってくれた。

向かった先はC寺。

お昼過ぎにC寺に着くと、
住職さんは待っていたように家の前にいた。

住職「こんにちは」

私「あの、やっぱりだめで…」

住職「落ち着いて、
ゆっくり話を聞きますよ」

やさしい目をしていた

住職「そちらの方もですね」

住職さんはBに向かってそう言った。

Bはハっとした顔をして、
静かにうなずいた。

まず驚いたのはBも憑かれていたこと。

Bは私とAが苦労しているのを知って、
自分のことは自分で解決しようと思ったらしい。

住職さんは、
私に憑いている女は
この地と関係があるかわからないと言っていた。

ただ、
あなたがそう感じるなら
そうなのかもしれないとも言っていた。

そして、
すぐに祓いましょう
と言って念仏を唱えてくれた。

なんとなくだが、
体が軽くなった気がした。

元々それほど強い念があるわけではないから
これで大丈夫だと言われた。

うれしくて私はそこで泣き崩れた。

問題はBの方で、
ちょっとやっかいらしかった。

結局Bはそのお寺で数ヶ月過ごすことになる。

ちなみに、
二人とも有料だった(苦笑)

最後に私が見た能面について。

住職さんにも良くわからないが、
憑いているわけではない。

もしかすると妖怪とか、
その地の神様の類ではないかと言っていた。

住職さん曰く、
その能面が神主の姿の時に語っていた話(霊の通り道とか)は
信憑性がある気がするとのこと。

どんな理由にせよ、
その能面はその地域にずっと昔からいるのではないか。

祠で祭られた何かの変化した姿なのか、
上流の水神様に関連した何かなのか、
わからないけれど、
間違いないのは関わらない方が良いということ。

もしかすると、
その地域のお年寄りで
知ってる人がいるかもしれないとも言ってた。

数日後、
私とAはBを残して東京に戻った。

その後私の周りで霊的なことは起こっていない。

AとBとは今でも仲の良い友達でいる。

BはC寺から帰ってくるとき、
そこで作った彼女を連れて帰ってきた。

結局Bは数年後
その人と結婚して今は2児の父だ。

Aの女関係はよくわからない。

とりあえず独身。

私も独身(苦笑)

でも、
健康で問題なく生活できていることに感謝している。


後日談

ここからはB談

夜ベッドに腰掛けていたら、
足にひんやりした感覚があって
気づいたら濡れていたことがあった。

夜洗面所で手を洗っていたら、
鏡に子供がうつった気がして
驚いて後ろを振り返ったが誰もいなかった。

子供の笑い声が聞こえて
辺りを探しても
誰もいないことが何度かあった。

男の子の顔が崩れて
自分にまとわりついてくるような夢を見た。

お寺にお祓いに行ったけど
変化がなかった。

気にしたら負けだと思って、
気づかない振りでごまかして数日たつうちに、
Aから電話が来て
私達に合流することになったそうだ。


ここからはC寺の住職さん談

Bに憑いていたのは
小さな男の子の霊だったらしい。

私に憑いていた女よりも古くて強い霊で、
簡単には祓えそうもない。

しばらくお寺で生活して
Bと霊とのつながりが薄れるのを待つしかないと言っていた。

結果的にBはその寺にとどまることになり、
今も年に1回通っている。

質問にもあったけど、
神主、能面、女の霊、男の子の霊のつながりは
私にもよくわからないんだ。

あったことをそのまま書いたから、
小説なら水があったこととかも
後々の布石になるのだろうけど、
そんな気の利いたことはなかった。

ただ、あの後D(Bの仲間)が
いろいろ調べてわかったことを付け加えて、
最後に私なりの解釈を書いておくことにする。

D達から聞いてわかったこと

私達がキャンプをした次の日の朝、
町の職員は確かに洞窟の板の張替えをしたらしい。

ただ、その場に神主は呼んでいないとのこと。

町の職員が板を張り替えるのは数年に1度で、
洞窟は中に不法投棄されたガラス片などが落ちているため
危険だからだそうだ。

御札が貼ってあるかどうかは把握してないらしい。

私とAが訪問した神主宅はやはり存在してなくて、
そこは数年前から空き家だった。

川の上流には
確かに治水工事の安全を祈願した祠があった。

島にあった洞窟は
治水工事以前からずっとあるものらしい。

昔から漁の安全を祈願する場所として使われていたらしいが、
戦後にはすでにふさがれていたそうだ。

お年寄りの中には洞窟の存在を知っている人はいたが、
何であるのか、何で塞がれているのか
知っている人はいなかった。

名刺はC寺で焼いてもらった。

電話番号がつながるかとか気になったけど、
それよりももうこれ以上関わりたくないという気持ちが強かった覚えがある。


最後にわたしなりの解釈

C寺の住職さんの言っていたことも含めてだけど、
元々神主さんは存在していなくて、
能面のような姿の霊的な何かが
神主の姿で私達の前に現れたのだと思う。

バカじゃないの?
と言われたとき私が感じたのは
“強烈な悪意”で、
意味もないのにがんばって無駄だったね~
って感じだった。

私のことを精神的に追い詰めて楽しんでいたのか、
もしかしたらそれで私が死ぬことを望んでいたようにも感じる。

タイミング良く(?)
私とBに霊が憑いた理由はわからないけれど、
もしかすると能面に支配されるような状態の霊が多数いて、
その中から女と子供を擦り付けられたような感じなのかもしれない。

C寺の住職さんも、
私と女の霊との繋がりは憑かれるというには
あまりに弱いものだと言っていた。

能面は島に祭られていた何かの変化した姿だと私は思っている。

後から考えると、
霊道の話をしていた時に
島の祠を封じたことを不満げに話したような気もする。

あそこまで手のこんだしかけをしてまで、
私達にいたずら(?)をした理由はわからない。

世の中には触れちゃいけないものがあるし、
交通事故にあうように、
突然向こうからやってくることもある。

そういうことだと思う。

また次の話でお会いしましょう。