<最怖>この世で最も怖い話まとめ

この世で最も怖い話をまとめています。毎日19時20時21時に1話づつ投稿。あなたを恐怖のどん底に落し入れます。朗読もはじめましたのでそちらもどうぞ。

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<最怖>まとわりつく女

俺が現在住んでいる場所は、
九州北部の田舎町だ。

生まれも育ちもずっとこの町で、
娯楽は無いが静かで、
緑がいっぱいな良い所だ。

今現在も当時も俺は彼女と一緒に住んでいる。

その彼女と喧嘩し、
カッとしてしまい、
外に飛び出したのが事の始まり。

たわいのない事で始まり、
大きくなり、お互いに言い分も聞かず、
罵り合う中、俺は言い争いに嫌気が差し
家を飛び出した。

家から出てしばらく歩いていると
頭が冷えたのか急に冷静になり

「飛び出す事でもなかったなー」

と思ったが
今帰っても格好がつかないし、
幸い実家がそう遠くないから、
そのまま歩いて実家に戻ろうと思い、
実家へ向け歩き始めたんだ。

いつも車だし、
たまには歩くのもいいなとか思いながら、
バイパス外れの街灯もさほどない歩道を歩いていると、
10メートル先位に人影が見えた。

「こんな時間に散歩?」

と思ったが、
気にせず歩いていると
何故か妙に鳥肌が立った。

歩きで軽く汗かく位だし、
寒いわけじゃないのに
鳥肌は収まらなかったんだ。

そんな妙な感じを余所に
人影との距離はどんどん縮まっていた。

多分鳥肌もそれが関係してたんだと思う、
今考えるとだけどね。

人影に近付くにつれ、
髪の長さで、何となくそれが女だと思った。

「こんな夜中に女性一人で?」

と思ったが、
此処にも深夜徘徊してる男がいたので
考えない事にした

そうこうしてる内に女性との距離は詰まり、
女性に近付くにつれて
誰かと話しているような声がするのに気付いた。

「電話かな?」

と思ったが、
そんな素振りはないし、
夜中にこんな所でブツブツ言ってるなんて
ホラー以外の何物でもない。

軽く不気味な状況に気味悪くなった。

ビビりな俺は再度歩きだした。

早歩きで。

そして女性との距離が詰まるにつれ
話している声が少しだがはっきり聞こえてきたが、
それが変だった。

何と言うか、
録音された声を再生してる感じだ。

「この女の人が喋ってるんか?」

と思いながら見ていると
録音されたような声が急に大声に変わり、
体をくねらせ始めた。

俺はウオッとなりながらも

「大丈夫ですか?」

と駆け寄ろうとしたが
その異様な姿に硬直した。

他に言いようがない位に異様だった。

暗いから顔は見えないが、髪はボサボサ、
肩らへんがモコッとなった。

腰が絞ってある白いワンピースらしき物を着てるんだけど、
ワンピースの所々に黒いシミがついてた。

近くに精神病患者の施設があるし、
もしかして逃げ出した?とか思うと怖くなり、
声をかけるのも躊躇われ、
足早に女の前を通り過ぎようとした。
(結構そんな事があった)

でもやっぱり好奇心って凄いもんで
チラッと横目で見ちゃったんだよね。

見た瞬間に
物凄く動悸が激しくなったのが分かった。

やっぱり普通じゃなかった、
というより異常だった。

真っ黒だった。

暗いからとかじゃなく、
目以外は塗り潰したように黒く、
耳元には有るべき物が無かったように見えた。

思わず

「ウオワァ」

と叫んだ瞬間、
女はゆっくりこちらを振り向いた。

少し遠くから照らす薄暗い街灯の明かりが
女の顔を照らしたが、
やはり見間違いとかではなかった。

金縛りとかではないが、
体が小刻みに震え動けなかった。

しばらく向き合った状態になったが、
見る見るうちに女が顔を歪ませた。

俺を見ながら笑った気がした。

次の瞬間には全力で走っていた。

実家に向け一心不乱に。

後ろは絶対に振り向けなかった。

俺が走りだしたと同時に、
まるで歩調を合わせるように

「ペタペタ」

と足音が俺を追って来ていた。

結構足には自信あった。

だが、
いくらペースを上げても
背後からの足音は無くなる事は無かった。

涙を流し、
どれだけ息が上がろうと
ペースを落とす事だけは出来なかった。

直感的にこれはヤバいと考えていた。

体力の限界が見えはじめた時、
ようやく実家が見え、
俺は飛び込むように実家へ入った。

夜中だが兄は起きていたから
鍵を開けてくれていた。

俺はすぐに施錠しチェーンをかけ、
玄関のドアスコープから外を見渡したが
女はいなかった。

俺はそこでやっと安堵し、
玄関で座り込んでいた。

すると兄が

「どうかした?」

と聞いて来たが、
息を切らし、
話す元気も無い俺は

「何もない」

と言うと、兄は

「あっそ、なら俺寝るから」

と2階へ上がって行った。

しばらく座り込んで、
気持ちが落ち着いて来た俺は、
水でも飲むかと立ち上がろうとした時だった。

不意に肩を叩かれ、
兄と思い

「何?」

と振り返ると兄の姿は無く、
変わりにあの女が
薄ら笑いを浮かべこちらを見ていた。

そこからの記憶は無い。

次に目が覚めた場所は病院だった。

どうやら小便垂れ流して、
玄関で泡を吹いていたらしい。

この歳で漏らしはないと思ったが、
何故か仕方ないと自分自身に言い聞かせた。

親は心配していたが、
何の異常も無く、
次の日には実家に帰らされた。

帰ってからは昨晩の出来事を思い出していた。

心霊スポット等に行った覚えもないし、
そもそも性格的に慎重だから
危ない所にも絶対に近づいたりしない。

なのに何で俺が?
とばかり考えてた。

幻覚を見たのか?とも考えた。

俺は精神的にかなり弱い。

ストレスが溜まると
よく幻聴が聞こえたりする。

だが、今回は
明らかに今までとは別物のような気がしていた。

そうは考えてはいたが、
俺では答えなんてだせないし、
心霊現象を信じてないわけではないけど、
自分自身が経験するのとでは全く違う。

受け入れる事は中々出来ない。

それに何はともあれ済んだ事だ。

気にしないようにした。

だけど、
その考えは甘かったのを思い知る事になった。

気にしないようにしたとは言え、
やはり恐怖は消えず、
念の為、部屋の四隅に盛り塩をし、
ずっと警戒していた。

だけど、何事も無く、3日が過ぎ、
あの出来事は夢だったのでは?
と思い始めた頃だった。

まだ彼女と仲直りも出来ず、
実家でネットに勤しんでいる時だった。

YouTubeを見ているとPCの音声混じって、
あの時の話し声が聞こえた気がした。

俺は

「嫌々それはない」

とか思いながらも、
手は脂汗でびっしょりで、
後ろを振り向けないでいた。

基本的なチキンだ。

だけど、
いつまでもこの状況は無理だし、
俺は覚悟を決めて振り返った。

俺のすぐ背後で
あの女が体をくねらせながら奇声を発していた。

またも俺は漏らしながら絶叫した。

部屋を飛び出し、
リビングにいた兄へ泣きついた。

一応家族に事情は説明していた。

誰も信じなかったけどさ。

だが流石に家族も絶叫しながらを泣きついてくる俺を
普通ではないと思ったからか、
真剣に心配し、お守りをくれたり、
兄が何処から仕入れたか分からないお札をくれたりしたが
まるで効き目は無かった。

女は毎晩のように
話し声と共に俺の前に現れた。

何度絶叫しながら気絶し、
何度漏らしたかも分からない。

いつも泣きついている兄の部屋で寝たりもしたが
女は関係無く現れ、
俺にははっきりと見えているのに
兄には見えていないようだった。

夜も殆ど眠れなかった。

目を閉じると、
あの女が上から覗き込んでる光景を想像し、
目を閉じる事も出来なった。

毎日こんな感じで
心身共に限界に近い俺は藁にも縋るつもりで、
あらゆる神社仏閣に行き、話しを聞いてもらい、
お祓いをしてもらったが全く効果は無かった。

大抵は

「気の持ちようですよ」

と要するに勘違いと言われ、
最後は俺が見てもらう時にかまをかけたりしたが
検討違いの事を言われ、
俺は神社仏閣でのお祓いという選択を諦めた。

色々考えたりもし、
やっぱり幻覚か?とも思った。

誰にも見えないなんておかしい、
とも考えた。

前述に述べたとおり
俺は精神的に弱い。

幻覚は今まで無かったが、
幻聴の延長線と思えば
一応納得出来るかもしれない。

だけど、
そうは思えない程に現実感があった。

どう考えても、
俺なんかじゃ答えは出せないし、
答えが出せても俺じゃあどうしようもない。

途方に暮れ、
いよいよ頭がおかしくなりそうな中、
一つの希望が出来た。

友人の知り合いに過去に
そういった怪異をどうにか出来たという人物がいた。

正直、希望と言うには大袈裟だが、
今の状況からするとかなりの救いになった。

その人物は今はこっちにいないらしく、
2日後に来てもらえる事になった。

その晩、多少だが希望が持て、
縋る物が出来た事と、
怖さを紛らわす為に
全く飲めない酒を目一杯浴びるように飲んだ。

普段は焼酎ー杯でベロベロ近くなる俺が
その日は一人で一升近くを飲み、
フラフラになってる時でも、
当たり前の様に女は現れた。

もうどうでもよくなったかとか、
その時の精神状態は自分でもわからないが、
狂ったように、部屋に一人でずっと

「早く殺せよ」

と怒鳴り散らしていたらしい
(あまり記憶がない)

だが、不思議なもんで
女が現れた時の事はしっかり覚えている。

その夜も女は現れた。

その日違ったのは
いつも俺はすぐ逃げ出してたのに
その日は逃げなかった事と多分半分死ぬ気だった事だ。

もう解放されたかったんだと思う。

また次の話でお会いしましょう。