<最怖>この世で最も怖い話まとめ

この世で最も怖い話をまとめています。毎日19時20時21時に1話づつ投稿。あなたを恐怖のどん底に落し入れます。朗読もはじめましたのでそちらもどうぞ。

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<最怖>初詣

俺が神社で初詣したときの帰り。

始発前でまだ4時ちょい過ぎ頃だった。

最寄り駅は2路線あるのだが、
近い駅の路線は帰路が若干めんどいため、
遠い駅の路線へと歩くことにした。

遠いと言っても精々40分程度で、
デスクワーク職の俺にとって丁度良い運動と思い
川沿いの道を歩いていた。

初めての場所ゆえ
迷子にならないか不安だったが、
スマホの携帯ナビと言う
文明の利器を持っていたので
然程道に困らなかった。

ただ川沿いにまっすぐ
歩くだけで駅のすぐ近くまで到着するぞ、
とナビのルートが示していた。

川沿いの道は狭いが舗装されていて、
川岸には金網の柵が設置されている。

また、後方に3人の人影が見えた。

彼らも同じ駅を目指しているのだろう。

最寄り駅は2駅しかないし、
このルートは明らかに遠い駅へ向かうルートだし。

ところが、
やや広めの道路が横切る十字路を直進しようとすると、
後続の3人が暫くそこで立ち止まり、
少し間を置いて十字路を横に曲がり去った。

ははーん、
奴ら道を誤ったな?
と歩を進めつつ
携帯のマップをドラッグさせ
彼らの向かう先のルートを確認する。

見る限り
一応そちらでも大通り経由で駅に着くようだ。

ただ15分は余計にかかるだろう。

暴漢対策では大通りの方が有利だろうが、
やはり文明の利器というものは
こういう抜け道まで教えてくれて便利なものだ、
と右手にスマホ、左手にマグライトミニを持って
川沿いの道を歩いて行った。

しかし俺も少し違和感を感じてきた。

件の十字路から20分近くは歩いただろうか、
ナビではあと500mにも関わらず
道は未舗装になり、川岸の柵もなくなり、
やがて川岸の道路と言うよりも河原を歩いている、
そんな感じの道になってきた。

周囲は草の茂る荒地だがそれなりに開けていて、
遥か向こう側には大通りの街灯が見受けられる。

やがて川は蛇行して見えなくなり、
再び荒地を一直線に突っ切る未舗装の道を進むと、
突然道が開けて、目の前に小さな集団墓地が現れた。

ナビは目的地まであと100mそこいらと表示されているのに、
近くに駅舎すら見当たらない。

なんか正月早々気味がわるいなーと思いつつ、
今のマンションに入居した時のことを思い出して
気を紛らわせていた。

不動産会社にマンションの14階へ案内され
ベランダを見せられて

「どうですかこの素晴らしい光景は!?」

と言われたので
思わず覗き込むと
すぐ前方に霊園を見つけてしまった。

不動産会社の案内員も
それに気付いたみたいで、
二人して気まずい雰囲気になり
言葉選びに迷った挙句

「ぼ……墓地墓地ですねぇ」

と思わず声が出て、
二人して大笑いした時のことだ。

その時のことを思い出し笑いしながら
不気味さを紛らわせて進んでいくと、
集団墓地を通り過ぎて、廃屋の前に出た。

どうやらそこで行き止まりの様だ。

いや、よく見ると
先の藪の中に獣道のようなものがあるが、
まさかそこを歩けとか
馬鹿なことをナビが言うわけないだろうな……
と思って改めて廃屋の方を見る。

木造で、昭和中期、と言うより
何か大正時代を思い浮かべるような造りだった。

これが駅舎なわけないだろー、
線路だってないし……と思いつつ
その廃屋をしげしげと眺めた直後、
全身に猛烈な寒気が走った。

別に廃屋内に何かが見えたわけでもないし、
そもそも俺零感だし
オバケとか信じてなかった。

でも寒気と言うか悪寒と言うか、
なんかここにいたらヤバい!
って頭が自動的に判断して、
元来た道を猛ダッシュで走った。

走ったと言うより、
足が勝手に走っていく感じ。

道中河原を通過する場所があった筈だが、
まるで記憶にない。

ふっと気付くと、
大通りが横切る十字路に出ていた。

三人組が曲がっていった、
あの道だ。

もういくら携帯ナビとは言え
こんな怖いところは散々だ、
大通りを歩いて帰る!と、
大通りを進みながらこのクソナビめ、
と携帯を取り出したところ、
電源が切れていた。

電源を入れると
お馴染みの電池切れのマークが。

残り3時間くらいあったはずのバッテリー残量は
どこに消えたのか……。

それからは案内標識に従って
特に迷うことはなく駅に到着した。

決して新しい駅舎では無かったが、
ごく平凡な感じで、
始発が近いのか明かりもついていた。

程なくして始発列車が到着し、
そして無事に帰宅することができた。

ちなみに翌週の朝、
別件で偶々同じ場所を通過することがあったのだが、
そこはどう見ても丁字道路で、
川沿いの先は深い藪と森に包まれて
到底人の通れるような状態ではなかった。

んな馬鹿なと思い、
近くに車を止めその辺を観察してみたが、
木々の形を見ても明らかに植林っぽくないし、
半月であの荒地がこんな森になるとか
どう考えてもあり得ない。

あの時俺が進もうとした藪の中に
ボロボロに錆び果てた金属製の立て看板が転がっていて、
ひっくり返すと

「この森で絶対に遊ぶな」

と書かれてあった。

その時ふと気付いて
あの時のスマホを取り出しナビを起動すると、
ルート候補は何度リルートしても
3人が進んだ大通り経由の道しか出てこなかった。

あの廃屋や獣道は何だったのか、
さらに先を進んでいたら俺はどうなっていたのか、
それは結局解らず仕舞いだった。

ただその年の初詣で普段と違っていたのは、
神社の場所だけではなく、
今年が本厄年で、
念のためお守りを買っていたことだ。

あの時の寒気は
お守りの警告だったのかもしれない、
と勝手に思い込んでいる。

今も森の先に件の廃屋があるのかもしれないが、
探しに行く勇気は俺にはない。

まさか年初めから
こんな怖い思いするとは思わなかった。

また次の話でお会いしましょう。