<最怖>この世で最も怖い話まとめ

この世で最も怖い話をまとめています。毎日19時20時21時に1話づつ投稿。あなたを恐怖のどん底に落し入れます。朗読もはじめましたのでそちらもどうぞ。

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<最怖>怪談話の検証

俺がまだ学生だった頃、
大学の先輩がどこからか怪談話を聞いてきて、
得意げにサークル部屋で話していた。

その話というのが、60年代か70年代頃、
当時うちの大学もいわゆる安保闘争とかいうやつで
学生運動が盛んだったのだが、その中の結構な数の一団が、
よくあるなんちゃってテロみたいな活動ではなく、
何かオカルト的な儀式による革命?みたいなのに大真面目にはまっていたらしく、
大学の裏山の既に使われていない建物内で
何らかの儀式をしたらしいという話だった。

そしてここからがありがちな話なのだが、
儀式の結果「何か」を呼び出してしまったようで
学生の何人かがそれを見て発狂、殺人事件にまで発展したと。

そして今でもその廃屋には
その時殺された学生や「何か」がまだ潜んでいるという、
そんなベタな話だった。

俺は

「オチそんだけかよ!」

と心の中で突っ込みいれながら、
たしかに大学の裏に小さな山がある、
そこの大部分は森と言うか藪だが、
そもそもあそこに建物なんてあったっけ?

あれば気づくよなぁなどと考えていると、
先輩が突然

「今日の夜その建物探しに行こうぜ!」

とわけの解らない事を言い出した。

その時部屋にいたのは俺と先輩、
そして俺と同じ1年のTとMだったのだが、
ノリノリなのは明らかに先輩だけで
俺とTとMは顔を見合わせて

「マジか…」

と明らかにめんどくさそうに顔を見合わせた。

さっきまでいた他の先輩達は
いつの間にかいなくなっている。

多分「色々察して逃げた」のだろう…

実はこの先輩、
普段から面倒見が良く凄くいい人で
周囲の評判も良く友達も多いのだが、
なんというかやたらこの手の話に騙されやすいうえに
無駄に行動力があって、
「良い人」ゆえに俺達は断れず
何度か先輩のこの手の「探検」に付き合わされたことがあったのだ。

その夜、俺達は
結局先輩の探検に付き合いその建物を探す事になった。

季節は夏、
山の中に入れば当然ヤブ蚊とかがいっぱいいるし、
夏なのでやたら暑い、
要するに山の中を歩き回れば蚊に刺されまくるし
無駄に汗だくになるという事だ。

俺はぶっちゃけ、建物は見付からず
朝まで山の中を歩き回る事になるんだろうな
と覚悟を決めていた。

やたらハイテンションな先輩、
そしてこの後の展開を考えて
色々と重苦しい雰囲気の俺とTとMは、
大学の裏道から雑草が生い茂り
明らかに何年も人が入っていない山道を進んでいった。

山道に入り40分ほど歩いた時だろうか、
なんと意外とあっさりと
コンクリートでできた小さな資材置き場のような建物を見つけた。

俺とTとMは意外と早く見付かった事にホッとし、
どうも先輩もこんなにあっさりみつかると思っていなかったらしく
更にテンションが高くなっている。

ぶっちゃけて言うと、建物があったが
実際問題ここが目的の場所かどうかなんて解らない。

解らないのだが、
「次を探そう」などと言われたらたまらない俺は
そのことは黙っていた。

俺とTと先輩が近付いて中の様子を探ろうとすると、
急にMが真顔で

「ちょっと待った!」

と俺達を小声で呼び止めた。

Mは3人に姿勢を低くするように言うと、

「あそこに誰かいるぞ」

と、建物の窓を指差している、

俺達はその方向を見てみた。

明かりもついていないので気付かなかったが、
窓のところにはっきりと人影が写っている。

髪型からして女性だろうか。

この時になって、
俺は昼間の先輩の怪談話が頭を過ぎった。

「いや…まさかね…」

そうは思ったが、背筋が寒くなり
暑さとは違ういやな汗が体から吹き出てくる。

俺だけでなく
TとMも多分同じように感じていたのだと思う。

2人とも一言も言葉を発さずじっとしていたのだが、
先輩だけは違った。

先輩は

「人がいるなら噂が本当か聞いてみね?」

ととんでもない事を言い出したのだ。

俺は唖然として

「この人は物凄く勇気があるのか?
それともありえないくらいバカなのか?」

と真剣に先輩の頭を疑った。

真夜中に真っ暗な廃屋内で何かをしている人影、
怪しいにもほどがある。

人だったとしても
とてもまともな人とは思えない。

そんな怪しい人物に自分からか関わろうなどと
普通は思わないだろう。

まあ、良く考えると
こんな真夜中に男四人で山の中をうろうろしている俺達が
人のこと言えた立場ではないのだが…

とにかく先輩を思いとどまらせないといけないと感じた俺達3人は、
思いつく限り色々な事を言って
先輩を踏みとどまらせようとした。

が、その会話の声が少し大きすぎたのかもしれない。

ふと気付くと
窓のところの人影がいなくなっている事に
Tが気が付いた。

俺たち4人があたりをキョロキョロしていると、
ドアのところに人影が見えた。

ビクッ!となった俺が
思わずその人影に懐中電灯のライトをあてたのだが、
その姿は異様としか言いようの無い姿で、
俺たちはヘビに睨まれた蛙のように
身動き一つできなくなってしまった。

年齢は50代後半から60代くらいの
どこにでもいそうなおばちゃんなのだが、
髪の毛はロングでボサボサ、
血まみれのエプロンをして右手にでかい包丁、
左手に何か原形を留めていない血まみれの肉塊を握り締め、
何かブツブツと呟きながら物凄い形相でこちらを睨みつけている。

おばちゃんは暫らくこちらを睨みつけていたのだが、
唐突に悲鳴とも絶叫とも聞こえるような、
なんと表現したらいいか解らない凄まじい声で

「誰だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

と叫んだ。

そして早足にこちらに向かってくる。

さっきまでノリノリだった先輩も流石に顔が真っ青で、
硬直している俺達に

「逃げるぞ!」

と言うと、
俺達を後ろから追い立てるように走り出した。

俺達が走り出すと、
そのおばちゃんも物凄い形相のまま
こっちを追いかけてきた。

走っている最中気付いたのだが、
おばちゃんは走りながら何か叫んでいる。

内容は殆ど聞き取れ無いのだが、
言葉の節々にソーカツ?かソーカン?と言っているのだけが
判別できた。

意味は良く解らない。

どれくらい逃げただろうか、
大学や民家の明かりが見えるようになった頃、
俺はもう追ってきていないんじゃないかと後ろを振り向いた。

すると、
先輩が必死の形相で走ってはいるが、
その後ろには何もいないように見えた。

俺は息を切らしながら、
先輩とTとMに

「もう追ってきていないっぽい」

と途切れ途切れに言うと、
そろそろ体力が限界だった事もあり
その場にヘタリ込んでしまった。

先輩もTもMも同じように座り込むと、
先輩が

「あれ、幽霊とかじゃなく人だよな?」

と自分に言い聞かせるように聞いてきた。

Tが

「人なんだろうけど…
あれは普通じゃないっすよ…」

と返した直後、
俺達の座り込んでいる場所の後ろの藪がガサッと鳴り
人影が見えた。

あのおばちゃんだった。

しかもそれだけではない、
後ろに少なくともあと4人は人影が見える、
おばちゃんは1人ではなかったのだ。

おばちゃんは相変わらず物凄い形相で
こちらを睨みつけている。

更に後ろのほうの人影のうちおっさんっぽい人が

「君たちどこまで見てた?
危害は加えないからちょっと話をしようか」

と喋りかけてきた。

口調は平和的なのだが、
明らかに声は悪意が篭っている。

俺達は本能的に

「このままここにいたら殺される」

と感じ、目配せすると
先輩がおばちゃんたちの集団に掴んだ砂を投げかけ、
それを合図にまた全力で逃げ出した。

山の坂道を転げるように走り抜け、
大学の構内へ逃げ込むと
Mがどこかに電話をし始めた。

電話が終わったあとに聞くと
警察に電話していたらしく、
暫らくするとパトカーがやってきた。

警官に事情を話すと、
暫らく無線でやり取りをしたあと、
詳しく事情を聞きたいという事で
俺達はパトカーにのって警察署へ行く事になった。

警察内である程度事の成り行きを話したのだが、
これで終わりかと思ったら、
もう一度詳しく事情を聞くので
もう少しいてほしいという、
俺達は警察署内で朝まで待たされた。

そして、朝になると
今度はやたらガタイの良い私服警官が2人やってきて、
俺達1人1人にまた詳しく事情を聞いてきた。

俺は流石に不安になり、
私服警官の1人に

「俺達なんかヤバイ事しちゃってんですか…?」

と聞くと、
警官はにっこり微笑んで

「君達は大丈夫だよ
、ちょっと念のために詳しく事情を聞いているだけだから、
昼には帰れるよ」

と言ってきた。

警察官の人が言ったとおり、
俺達は昼頃には帰って良い事になり、
連絡を受けたらしいゼミの教授が車で迎えに来てくれた。

教授に色々聞いてみると、
教授も事情はよく知らないらしいが、
どうも例の裏山で警察が山狩りをしている最中らしい。

先輩が

「あの集団は指名手配犯か何かなんですか?」

と教授に聞いたが、
その辺りも良く知らないとの事だったが、
明らかに大事になっているようだった。

その後、俺達は警察に再度呼ばれることも無く、
あの集団にまた出会うことも無く、
誰も事情を教えてくれないので詳細も解らずいたのだが、
事件から3ヶ月ほどたった時に少しだけ情報が入ってきた。

どうもあの建物、
何かのカルト集団の儀式の場所になっていたらしいということと、
警察の捜査の結果
あのあたりから大量の動物の骨が見付かったらしいという事だった。

結局それだけで、
その後事件らしい事件もなかったが、
あの事件から一つだけ変化があった。

先輩があの一件で懲りたのか、
軽はずみに「探検行こう」とは言わなくなったのだった。

また明日の夜にお会いしましょう。