<最怖>この世で最も怖い話まとめ

この世で最も怖い話をまとめています。毎日19時20時21時に1話づつ投稿。あなたを恐怖のどん底に落し入れます。朗読もはじめましたのでそちらもどうぞ。

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<最怖>ハチロー

8月、
ダチと2人でトレーラーでアルミボート引いて、
ハチロー(秋田県八郎湖)へバス釣りに行ったんですよ。

4日間の予定で。

ところが、到着前日から、
凄い雨で流入河川とか濁流なんですわ。

初日、西部やったんですけどいまいちで、
2日目から中央カンセンロとかいう、
ドブみたいな所でやったんですよ。

小雨の肌寒い中、
一日中やって、
そこそこ釣れました。

夕方帰ろうとした時、
川の真ん中に人が立っているのが見えたんですよ。

200mくらい先にぼんやりと。

夕方、結構肌寒いし、
釣りとか網とかやっている風でもなく、
棒みたいに突っ立っているんですよね。

ダチと、
なんか気味悪りぃなーとか言いながら、
なるべく避けて、
端を通るようにボートを走らせていたんですよ。

「やべぇぞ!」

前に座っていたダチが言いながら、
止めろと、
手で合図をしてくるんですよ。

何だ?と思って見ると、
さっきの突っ立っているヤツが、
その時点で、グレーっぽい作業服を着ている男のように見えました、

そいつが、
まっすぐお風呂に入るみたいに沈んでいくんですよ。

自殺なのか?
それとも何かしていて、倒れたのか?
助けなきゃ!
面倒な事になった・・・

いろいろな考えが、
頭の中をグルグルと回りました。

全開で近づいていく中、
その男はもう胸くらいまで水に浸かっていました。

50mくらいまで近づき、
こちらに背を向けた男らしい事が分かりました。

やばい、急げ!

「おいっ、アンタ!シッカリしろ!」

ダチが叫んでいました。

沈んでいく男は無反応でした。

・・・あれっ?・・・・・

ココって、そんなに深かったっけ?

次の瞬間、
サササ・・・とプロペラに砂が当り、
船外機のエンジンがストップしました。

全然浅いんですよ、
そこら一帯。

行きは岸よりを釣りしながら、流していたんで、
そこら一帯が、サンドバー(砂地の浅瀬)になっているのに
気付きませんでしたが。

とりあえず、エンジンを上げて、
エレキ(低速移動用の電動モーター)を少し水に突っ込んで
男が沈んだ場所へ近づきました。

「待て!止めろ!!」

「何で?」

「ちょっと、おかしいよ。
離れた方がいい・・・」

振り返ったダチの顔は、
血の気が引いてました。

「そうだな、そうしよう。」

ホラー映画なら、
ここでエンジンがかからないのが定番ですよね。

その通り。

さっきまで動いていたエレキが
全く反応しないんですよ。

ほんの一瞬、顔を見合わせたり、
今いる所の、底を見たりしている間に
男は沈んだのか、消えたのか、
いなくなっていました。

怖くて、しっかりとその辺りを見たり、
周りを探したりは出来なかったです。

ダチが焦りながら、
オールで底を押して
その場からボートを離すようにしたんですよ。

俺は、少しでも深い所に出たら、
速攻エンジン下げて、
かける準備をしました。

濁った水の底が見えなくなってきたところで、
慌ててエンジンをかけました。

かかれ、かかれ、頼むから、かかってくれ。

スターターを、
力いっぱい引っ張りました。

意外にも、
一発でエンジンはかかりました。

「やったー!
早く、このクサレどぶ川から脱出しようぜ。」

ダチは強がっていましたが、
顔面蒼白でした。

もちろん、俺もです。

行きに通った航路にボートを戻して、
全開で走りました。

男がいた場所を通りすぎる時、
ダチはじっとその辺りを見ていましたが、
俺は、怖くて見れませんでしたよ。

とにかく、
全開で走り続けました。

ボートを下ろした場所と自分の車が見えてきて、
助かったと思いました。

「なぁ、アレ、やばいヤツだよなー?
まさか、ホントに人だったなんてことは無いよな。」

「当たり前だろ、
ペラが底につく浅さだぜ、
人間じゃねぇよ。」

「おー、でも、初めて見たぜ、ホンモン。」

そんな軽口を少しは叩けるくらいにまで、
落ち着いてきました。

少し冷静になって気がつきました。

朝より、少し減水してるようです。

「ちょっと減水してっから、
ボート上げるのキツイぞ。」

「とっとと上げて、帰ろうぜ。」

その日、トレーラーを使えそうな所が無くて、
比較的段差の無い所からズリ降ろしたんですよ。

ボートを岸に近づけて、急いで装備を車に投げ込みました。

その間、
川の方はなるべく見ないようにしてました。

特に男がいた辺りは、絶対に。

軽くなったボートの先を岸に引っ張り上げて流されないようにして、
さあ、後はタックルを積むだけ。

ガシャ、ガシャ・・・

「あっ、チッキショー!
ボックス(釣り道具箱)、ぶちまけたー!
あれっ?・・・」

「ナニ、やってんだよ、早く拾えよ!」

「割れてる、こんなにでっかく・・・」

「えっ・・・」

ダチのプラノ(釣り道具箱)を見ました。

取手と留具の部分に、
何ヶ所もひびが入っていました。

「・・・なんだ、こりゃ・・・」

多分、俺もダチも同じことを考えていたと思います。

でも、お互い口に出しませんでしたよ。

何かが始まったり、来たりするような気がして。


2人とも、
無言で散らばったルアーかき集めて、
車に投げ入れました。

いったい、俺たちが何をしたって?

昼間、他にも釣りをしていたヤツはいたじゃないか。

もしも俺たちが何か間違えたのなら、
勘弁してくれ。

頼むから・・・・

でも、駄目でした。

ボートを上げようとして、
車から川の方に振り返ると
俺のボートのすぐ脇にあの男がいました。

多分、俺が立ったら、
ひざ位しかない水深の所です。

胸の辺りまで水に浸かって、
上流のさっき沈んでいった方に向いていました。

俺とダチは凍り付いて動けなかったです。

男がゆっくりと斜め上に浮き上がりました。

変な動き方でしたよ。

次の瞬間、ポンって感じで、
男が俺のボートに乗りました。

足が途中で切れていて、
何て言って言ったら良いか、
木が生えているようにボートにくっついてました。

「もうー、ボートいらねぇや。」

声が出ていたかは分かりません。

俺とダチは車に飛び乗って、
そこから逃げました。

走って、走って、
とりあえずサンルーラルまで来て、
駐車場にメチャクチャな停め方をして
レストランに入りました。

ビールを頼んで、
二人で顔を見合わせました。

「もう、ボート無くなってもいいや。
あそこには戻れねぇよ。」

「あぁ、お前には悪いけど俺も無理だ。」

その夜は電気、テレビをつけっぱにして寝ましたよ。

次の朝、
やっぱりボートが惜しくなって戻ってみました。

ボートは昨日の場所にちゃんと有りましたよ。

昨日の夜、
レストランからくすねた塩をボートにまきました。

トレーラーに乗せて、
宿の予定をキャンセルして、
そのまま帰りました。

なんとなく気持ちが悪いので、
そのボートは売っちゃいましたよ。

どこのショップかは言えませんけどね・・・。

また次の記事でお会いしましょう。