<最怖>この世で最も怖い話まとめ

この世で最も怖い話をまとめています。毎日19時20時21時に1話づつ投稿。あなたを恐怖のどん底に落し入れます。朗読もはじめましたのでそちらもどうぞ。

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<最怖>徘徊するモノ

知り合いが仕事の関係で、
一ヶ月ほど小田急線沿いの某町に引越しすることになった。

土曜日、友人二人と俺、
合わせて三人でそいつの引越しを手伝うことになった。

滞在期間も短く小規模な引越しだったので、
当日の昼過ぎには荷物を運ぶ作業が終わり、
雑然としたその部屋で四人で酒を飲みながら麻雀をやった。

俺は明日早く仕事があったので、
先に切り上げることになった。

終電に乗り、
20分もすれば自宅に着くような距離であった。

数日後の平日、
引越しを手伝った友人の一人、
Aがうちに遊びに来た。

二人で飲んでいると、
「あいつの家で不思議な体験をした」
と友人が言ってきた。

あの日、俺が帰った後、
3人で飲んでいたんだが、
次の日も休みだから、そのまま雑魚寝したのだが、
引越し主は、次の日も仕事があったので、
床に転がっている二人を置いて仕事に行ったのだそうだ。

寝ぼけまなこの状態の友人は、
寝たまま細い目で引越し主を見送ったそうだ。

しかし数分後、
引越し主が戻ってきた。

部屋をぐるぐる回っているので、
忘れ物でもしたのか?と寝ながら様子を見てたのだが、
どうも様子がおかしく
物を探しているというよりは、
ただ部屋を徘徊していた感じだったそうだ。

しまいには部屋の隅で座ったまま動かないので、
どうかしたのか?と思った友人は
重い体を起こして部屋を見渡すと、
部屋には二人以外は誰もいなかったそうだ。

あれは、
どうも引越し主じゃなかったと思うんだよ、
と友人が言うので
金縛りで見る幻覚じゃないのか?
不思議なこともあるもんだな、と首を傾げた。

よくある体験話だし、
その時は特に気にも留めていなかった。

週末、
引越しに携わった4人で
仕事後に飲むことになった。

他愛のない話をしていると、
引越しを手伝った一方の友人Bが、
数日前に不思議な体験をした、と言い出した。

話を聞くと、
Aと体験した内容と同じような体験をしていたようであった。

それを聞いて面白くなったAは、
俺も数日前に同じような体験をした、と話をした。

そして、
二人の体験談を聞いた引越し主が、
さらに奇妙なことを言い出した。

「実は俺も最近、自分の家で寝てたら、
誰かが部屋をぐるぐる歩き回るんだよ。
でも、起きたら誰もいないんだよな。」

と、ABと同じようなことを言い出したのである。

ABが、俺たちの話は、
おまえの家で起きたことだぞ、と言うと、
もともと怖い話が苦手だった引越し主は、
すっかり縮み上がってしまった。

「おい、一緒に来てくれよ。
俺、もうあの家に行けないよ」

怖がりの引越し主は、
その日家に帰れるわけもなく、
しばらく友人Aの家で泊まることになった。

しかし部屋を放っておくわけにもいかないので、
明日に再び四人であの家に行こうということになった。

次の日の昼、
引越し先近くの駅で集合し、
四人で引っ越し先まで向かった。

一ヶ月の滞在ということだったので、
いたって普通の安アパートの一室で、
引越し当日こそ何も感じなかった

部屋であったが、
三人が同じ奇妙な体験をしたこともあり、
何もあるはずがないと思えるわけもなく、
部屋に入ると、薄気味悪く、
何か不穏な空気が漂っているように感じた。

しかし部屋に特筆するほど
変わった部分があるわけでもなかった。

なあ、この箪笥、Aが運んだの?
とBが部屋の片隅にある箪笥を触りながら
何気なくAに尋ねた。

Aはその箪笥を運んで来た覚えがなく、
そもそもこんな大きいもの、持ってきたっけ?
という話になった。

すると引越し主が、
そのタンスはもともとあったやつだと、と言った。

もったいないからそのまま使ってくれ、
と大家が言ってきたそうだ。

箪笥はいかにも箪笥らしい、普通の箪笥で、
中に何か物が入っているわけでもなかった。

やはり見渡す限り部屋には何も奇妙な点はなく、
やることもないので、
引越し主は、荷物の細かい整理を始めた。

向かいの壁に背をつけるほど離れて箪笥を見ると、
ちょうど箪笥の上端、奥の壁に、
木の枠のようなものが見えた。

つま先を伸ばし、背伸びして見ると、
押入れや窓の枠のような、
木でできた枠線がはっきりと見えた。

箪笥の奥に何かあるんじゃないのか?と思った俺は、
三人を呼んで、重い箪笥を横にどかした。

箪笥の裏には、
木の扉でできた小型の押入れがあった。

なんでこれを隠すように箪笥を設置していたのかと考えると、
ゾーっと背筋が寒くなり、
ただ呆然と押入れを眺める四人の間には、
嫌な雰囲気が漂った。

居ても立ってもいられなくなった友人の一人が、
扉に手をかけた。

おい、と静止しようとしたが、
友人は構わず勢いよく扉を開けた。

うわっ!!と友人は叫び声をあげ、
何かに驚き尻餅をついた。

どうしたんだと思い押入れの中を見ると、
暗い空間の中に、人形がポツンと座っていた。

いたって普通の人形であったが、
三人の霊的現象の媒体だと考えるには、
十二分に相応しい雰囲気を醸していた。

人形には触りたくもなかったが、
しようもないので、
とにかく人形を持って
不動産屋に事情を聞きに行くことにした。

駅まで歩いて電車に乗り、
一駅先の不動産屋に着いた。

事情を話し、人形を見せて尋ねると、
不動産屋は心当たりがあったようで、
話をしてくれた。

なんでもこの人形は、
あの部屋に以前住んでいた
母子の家庭の女の子が持っていたものだったそうだ。

忘れて置いていってしまったんだね、
と大家は寂しそうに言った。

その家族は、
実はこのアパートに戻ってくる予定だったそうだ。

女の子が重い病気を患ってしまい、
長く入院をする必要があり
入院先の大学病院に近い場所へ一時的に住むことにし、
引越しをしたそうだ。

しかし数ヵ月後に母親が訪れ、

「もう部屋は必要なくなったので・・・」

と話をしたそうだ。

大家は深く理由を尋ねなかったが、
おそらく女の子の手術に失敗したのでは、
と思ったそうだ。

そのしばらく後に、
知り合いが入居してきたようであった。

話を聞いた俺たち四人は、
部屋を徘徊していた人影は、
人形を探していた女の子だったのでは?と全員が思った。

とにかく、
その家族に返してあげて下さいと、
人形を大家に渡し、帰路についた。

これで霊的現象は無くなるのならいいんだけど、
でもあの部屋にはもう戻れないな、と
ポツポツと話をしながら駅に向かっていた中で、
長い沈黙が続いたあと、友人が口を開いた。

「あれは女の子じゃなかった。」

と奇妙なことを言い出したのである。

はっきりと見たわけではないが、
感覚というか、そういうもので何となくわかる。

あの人影は女の子じゃなかった

と、なんと3人が共に口を揃えて言うのである。

せっかく大家から事情を聞いて、
やっと理解しかけたところだったのに、
それだと意味がわからないじゃないかと思った。

じゃあ、女の子じゃなかったとしたら何だったと思うんだよ、
と3人に尋ねると、全員が答えた。

「あれは人形だった。」

また明日の夜にお会いしましょう。