<最怖>この世で最も怖い話まとめ

この世で最も怖い話をまとめています。毎日19時20時21時に1話づつ投稿。あなたを恐怖のどん底に落し入れます。朗読もはじめましたのでそちらもどうぞ。

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<最怖>臨時の住まい

まだ俺が学生だった頃の話

入学した時から半年近く住んでいたアパートが、
どうも不動産屋のミスで二重契約状態だったらしく、
裁判になって
俺は期限内に出て行かないといけなくなってしまった。

不動産屋が菓子折りもって謝りに来て、
期限内には必ず条件に合う空き部屋を探すと言っていたのだが、
タイミングが悪かったのか運がなかったのか、
どうしても条件に合う場所が見付からず
立ち退き期限が来てしまった。

不動産屋も相当焦っていたんだと思う。

ほんとにギリギリになって

「とりあえず1ヶ月以内に見つけるから
ひとまずここに臨時で住んでほしい」

と、
とても俺の家賃じゃ住めないような賃貸マンションを紹介された。

つくりは少し古くて
恐らく築20~30年くらいは経っていそうだが、
部屋は2つあるし
風呂とトイレも別でかなりいい場所だった。

俺はあまりにも都合のいい話で
当初事故物件を疑ったのだが、
不動産屋が言うにはそういう事もなさそうだ。

ただ、

『夜中は少し治安が悪いので
外出はなるべく控えてほしい』

と念を押された。

俺は近くにDQNでも住んでるのかな?と考えたが、
まあ1ヶ月程度の事だし、
ほんとにヤバければ友達の所に居候でもすればいいだろう
くらいに軽く考えていた。

が、入居してすぐにここがDQNがいるとか、
そういう「ヤバさ」の場所ではないことに気が付いた。

色々あったので箇条書きにすると

・入居して2日目くらいに気が付いたのだが、
他のフロアには人が住んでいるのに、
俺が入居したフロアには
どうも俺以外に住人がいない

・ある日エレベータで自分の部屋にあるフロアについたら
ネコの鳴き声がする、
どうも非常ベルのついた消火器とかの入っているスペースからするようなので、
閉じ込められているのかと中を見たが何もいない

・2~3日に1回、
深夜天井から何かをズリズリと引き摺るような音がする、
最初上の階の住人の生活音か何かだと思っていたが、
どうも天井裏からしているらしい

・エレベーターから俺の部屋のあるフロアに降りると、
突然強烈な視線を感じる事がある、
もちろん周囲を見回しても誰もいない

・朝目を覚ますと
ベランダにスーツ姿の男の人が立っているのが
カーテンの隙間から見える、
何事かと思ってカーテンを開けると誰もいない、
ベランダに出てみると革靴が揃えておいてあり、
「おいマジかよ…」と下を覗きこんでも
人が落ちた痕跡は無く、
目線を足元に戻すと革靴も消えている

・これは何度も目撃したのだが、
ハイヒールが靴だけでフロアを歩き回っている、
しかも昼夜を問わず

・出かけて帰ってくるとバスルームに水が溜まっていたり、
強烈に香水の臭いが残っていたりする

・時々エレベーター横の階段から女の人の笑い声が聞こえる、
しかも普通の笑い声じゃなくてなんか狂ってるような

・週末の夜中の3時頃になると
必ず外からベチャ…ベチャ…となんか変な足音?が聞こえる

・部屋で電話をしていると、
混線してなんかうめき声のようなものが聞こえてくる事がある

そんな状態が続くので、
流石に1週間目に不動産屋に苦情の電話を入れたら

「ほんとうに申し訳ない、
深夜に外に出なければ実害は無いはずだから
もう暫らく我慢してほしい」

とお茶を濁された。

まあ俺も実害はなさそうなのは解っていたし、
あと2~3週間の辛抱と考えていたし、
元々こういう事には楽観的なほうなので
とくに気にしていなかったが。
ただ、2回だけガチでビビった出来事があった。

夜中にトイレに行ったら
玄関におばあさんが座っている。

カギはオートロックのはずだが…

ビビりまくった俺が

「あのー」

と声をかけるとお婆さんが

「お爺さんを待ってるんです、
ここにいますよね」

と聞いてくる。

いないと答えても、
ニコニコしながら
頑なにここで待つといって聞かないので、
埒があかないしとしょうがないから
110番通報して連れて行ってもらう事にした。

暫らくしたら警察が来て
お婆さんを説得して外に連れ出してくれたのだが、
ドアを閉めたとたんに
ドアが物凄い勢いで何度も叩かれ

「お爺さんをかえせーーーーー!」

と絶叫された。

びっくりしてドアを開けたら
白目剥いたおばあさんが
警官3人に取り押さえられていた。

あのときのお婆さんの物凄い形相は
今でも忘れられない。

もう一つは
ようやく入居できるアパートが見付かったと
不動産屋から連絡があった日の事。

日曜で学校もなく、
不動産屋から連絡がきたあと
何となく荷造りをしていたら、
玄関からガサガサと音がする。

なんだ?と玄関へ行ってドアを開けてみると、
30cmくらいのダンボール箱が置いてある。

不審に思いながらも中に入れて箱を開けてみると、
かなり汚い木彫りの人形ぽいものが入っていて、
裏にサインペンか何かで

「幸せになれる人形」

と殴り書きされている。

気味が悪いので人形を箱に戻して
玄関の外に出し荷造りを再開していると、
また外からガサガサと音がする。

今度はなんだよ…と思いながらまたドアを開けると、
さっきの箱の上に紙が置いてあり、

「幸せになれましたか?」

と書かれている。

辺りを見回し
エレベータや階段のほうも見てみたのだが、
誰もいる気配が無い。

この頃になると
このマンションの異様な出来事にも
そこそこ慣れてきていた俺は、

「ああ、またか」

と思いながら
特に気にせず荷造りに戻ったのだが、
今度はトントンとドアをノックする音が聞こえて来た。

最初無視していたが、
何度もしつこいので玄関をあけて怒鳴ってやろうとしたが、
ドアノブに手をかけたところでやめた。

なぜかというと、
上手く説明できないのだが
ドアをはさんで何かすごく嫌な気配がする。

ほんと上手く説明できないのだが、
全身がざわざわすると言えば良いのか、
なんかそんな感覚。

それでも外は気になるし、
恐る恐るドアスコープから外を覗いてみたら、
20代前半~中盤くらいの女の人が立っている。

ただし、
前身ガリガリに痩せていて髪の毛はボサボサ、
両手に包帯巻いていたが…

「うわ…」

とドアスコープから目を離そうとしたら、
そいつがドアスコープに顔を近づけ
くっきりとクマのある血走った眼で覗き込み、

「幸せになれたよね?なれたよね?」

と聞いてきた。

その行動にフイを突かれた俺は
びっくりして後ろへ倒れ、
暫らく放心していたんだが、
そいつは多分それから1時間くらいずっとドアに張り付いて

「幸せになれたよね?」

と質問し続けていた。

声が聞こえなくなってから
更に1時間くらい様子をみて、
ドアスコープから様子を見てみたのだが、
女の人はいなくなり
人形の入った箱も消えていた。

その後俺は
この事件から2日後にこのマンションを引き払い、
ちゃんとしたところに住む事ができるようになった。

ちなみに、不動産屋には
この事を全部話してどういう事なのか聞いてみたのだが、
不動産屋も詳細は知らないという。

そもそも、
おかしな出来事が頻発するようになったのも
つい2年ほど前からで、
元々は変な噂も自殺者が出たとか
殺人事件があったとか
そういう曰くのある場所でもないらしい。

ただ、ある日を境に
突然あまりにも異様な出来事が頻発するようになり、
あのマンションのあのフロアに入居していた人達は
半年もたずに皆逃げ出し、
新しく入った人達も
すぐに次々と出て行ってしまって
今にいたるとの事だった。

だから俺のような
よほど切羽詰ったケースでも無い限り、
現在は入居の募集すらしていないのだそうな。

ちなみに夜中に外に出るなと警告したのは、
俺の前にあそこに入居した人が
深夜「何か」に追い掛け回され階段から転落し、
結構な重症を負ったからだと言っていた。

「何か」と抽象的なのは、
怪我した本人の証言が
あまりにも支離滅裂で意味不明だったので、
結局正体がわからなかったかららしい。

以上で俺の話は終わりです。

ちなみに、
不動産屋から紹介されたアパートは
特に何も無い普通のアパートで、
色々迷惑かけたからと家賃も少し安くしてもらえたし、
卒業まで普通に快適に過ごす事ができた。

それと例のマンションなのだが、
2年前に近場を通る事があったので
寄り道して行ってみたら、
完全に取り壊され駐車場になっていました。

また次の話でお会いしましょう。